【今月の一言】

12月の一言 「弘法大師空海の書について」
岡田澄暉

今年も残すところ二十日余りとなりました。本当に様々なことがあった一年ですがこの時期、一年を振り返りながら年賀状を書かれている方も多いと思います。最近では年賀状作成もほとんどがパソコンだと思います。私は職業柄筆も使うのですがなかなか進まないのが現状です。
 ところで宗祖弘法大師は書道の名人として有名です。誰でも知る諺に「弘法にも筆の誤り」「弘法筆を択ばず」があります。日本書道の祖として仰がれ、一人で日本書道の水準を中国以上に押し上げた立役者であります。
 何年か前に県の文化会館で国宝弘法大師空海展が行われました。初めて風信帖を見たのですが、そのときの感動は言葉では言い表せないものがありました。
 風信帖は伝教大師最澄にあてた三通の書状を一巻としたもので、古来、第一通の書き出し「風信雲書・・・」より風信帖の名で呼ばれてきました。もともとは五通あったものが、関白秀次の所望により献上されたり、また盗難にあうなどして、三通になったようです。
 書風の面から見ると一通目は最澄を意識してか格調高く、すみずみまで神経が行き届いた用筆で、突く、引く、捩じる、弾く、叩くという要素が理解しやすく書かれ、王羲之の書法に則したものです。二通目はどっしりとした深みのある書風で、力強くスケールの大きさを示しており、時々あらわれる細い線が爽やかです。三通目は流麗な草体で内熟した境地を示しています。
 ある講演会で、書道家の先生が言われた「空海の運筆は、宇宙の運動をとりいれている」という言葉が今も鮮明に頭に残っています。本当に自由自在な筆づかいにはその言葉が一番適していると思います。
 皆さんもぜひ弘法大師直筆の書を見て下さい。必ず何か心に訴えてくるものがあるはずです。




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